「古道具のささや」
福岡市中央区平尾の古道具屋です。antiqueからvintageまで、日本の古道具、家具、器、石油ストーブ、思いもよらぬモノ、など多数品揃え。商品の入荷案内を中心に古いものにまつわる話あれこれ綴ります…。猫を連れてのご来店大歓迎です。
DATE: 2010/08/30(月)   CATEGORY: 雑文
「美しい暮しの手帖」
今日は新刊本のご紹介をさせていただきたいと思います。



「暮しの手帖」とわたし「暮しの手帖」とわたし
(2010/05/15)
大橋 鎭子

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当店の商品としても定番の「暮しの手帖」でありますが、有名な編集長である花森安治氏とともにこの雑誌を創刊し社長として現在も活躍中の大橋鎭子(おおはし しずこ)さん、御年90歳!の自伝的御本です。

巻頭には石井良子さんの寄せられた文章があります。石井良子さんといえば、ベストセラーの「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」で有名ですが、大橋鎭子さんとの接点がつづられています。この本が出版されてすぐのちの先月の17日の訃報には驚きました。わたしの手元にあるこの本の第3刷の発行年月日と同日なのを見て、やはり浅からぬ因縁があるのかしらとも思いました。

現在の「暮しの手帖」も素晴らしい雑誌でありますが、この素晴らしさを作っている理由がこの本を読むとはっきりとわかります。

かつて日本中の誰も彼もがなだれをうって戦争につっこんでいった事実を省みて、二度とこのような戦争をしないような世の中にしていくためのものをつくる、というゆるぎない思いのもとに作られた雑誌です。いまだこの雑誌を手に取ってみたことのない方の中には 所詮、料理や掃除など家庭の雑事を扱う婦人向け雑誌でしょ?、と思っている人もいるかもしれませんが、大間違いです。人間に必要なものは「衣食住」とよく言われますが、戦後の日本にはどれもが欠けていました。人間らしいと言える水準でみなが食べ、着て、住むには程遠い現実があったのです。いかにしてその溝を埋めていくのかという指針を打ち出した本だといえます。創刊号で花森安治氏が寄せた思いを引用します。




美しいものは、いつの世でも
お金やヒマとは関係がない
みがかれた感覚と、まいにちの
暮しへの、しっかりした眼と
そして絶えず努力する手だけが
一番うつくしいものを
いつも作り上げる



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暮しの手帖は、隔月刊行され、100号単位で1世紀、2世紀、と区切りがあり、現在は第4世紀の47号が発売されています。そして創刊から第22号までは「暮しの手帖」でなく「美しい暮しの手帖」でありました。本の中でこの「美しい」が添えられた理由が述べてありますが、たしかに創刊号には小ぶりな文字で「美しい」がそえてあります。第一号は写真が入っているのは感等のページのみであとは読み物なのですが、なんせ発行年は1948年(昭和23年)で紙質もたよりなく古本などの市場に出回っている物でも状態がよいものにはほとんどお目にかかれません。内容はというと、「直線裁ちのデザイン」「ブラジアパッドの作り方」など…実用的な内容です。ブラジャーを自分で作るなんて新鮮な驚きですけれども、どうも80年代のマドンナのとんがったブラジャーを思い出してしまう前衛的なデザインです。




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ちなみに昭和27年、16号の「浴衣のように着る服」がとても素敵だったので、真似して作ってみたところ、上々の出来で3枚作って今年の夏はこればかり着ています。

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モデルは若かりし頃の大橋鎭子さんです。これももちろん「直線断ち」で、浴衣と同じ構造です。浴衣が縫える人ならだれでも縫える!という触れ込みですが、浴衣が縫える人自体が珍しい昨今では逆の発想で、既成の浴衣や、古着の浴衣からワンピースへ作り変えると簡単です。

浴衣から作るには、袖と衿を外して、外した襟を半巾に切ります。それぞれを小さな衿とウエストベルトにします。あとは好きな丈に合わせて裾を切り、脇をつめるだけです。ちょっと派手になった浴衣やおばあちゃんの身丈の足りない浴衣などでどんどん作れます。脱ぎ着も洗濯も楽なので真夏の家の中で着るのに最適です。






そして暮しの手帖といえば、「商品テスト」。時に企業を名指しで辛辣に批判することもあるコーナーですが、昭和37年、67号のあとがきで、「石油ストーブのテストについて」という文章があります。この記事は当時のストーブを扱う当店でも非常に参考にさせていただいているのですが、57号の記事で当時の日本製ストーブの性能の悪さを露呈したのちの、メーカー側が取った態度がいかようなものであったか。そして2年後の石油ストーブのテストにおいての結果がはるかに改善されていたことの喜び、がつづってあります。「商品テストを 商品 にするような雑誌にしてはいけない」という思いのもとに、広告を入れずに紙面を作る事はほかの雑誌で類を見ないことからしても、容易なことではないでしょう。

2007年(平成19年)第4世紀26号からは文筆家、書籍商として知られる松浦弥太郎氏を編集長に迎え、紙面を一新していますが、おしゃれな天然系雑誌にも似た内容の中にも日本人の「暮し」を見つめる芯の通ったまなざしは脈々と受け継がれていると感じます。





雑誌の宿命として、家庭で保管する場合の場所に困り、長年の購読者は古いものは手放してしまったという方が多いのではないかと思います。古本屋、古道具屋などでむかしの「暮しの手帖」を見つけたときは是非手に取ってほしいと思います。数十年前のものでもパラパラとめくれば、きっと何かしらあなたの暮しの役に立つ事柄があると思います。
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