「古道具のささや」
福岡市中央区平尾の古道具屋です。antiqueからvintageまで、日本の古道具、家具、時計、ガラス製品など多数品揃え。石油機器技術管理士の店主が石油ストーブの整備・修理も承ります。猫を連れてのご来店大歓迎です。
産地別の漆器
日本には全国的に漆器産地がありますが、今年の「漆器まつり」で入荷している商品の中から、特色のあるものについてご紹介しておきます。すでにお買い上げくださいましたかたも参考にしていただけましたら幸いです。


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大振りな根来(ねごろ)の雑煮椀。

黒漆の中塗りの上に朱漆で上塗りを施した木製の器物を一般的に「根来塗」と称しています。使い込むうちに自然に摩耗して朱の下から黒が出てくるところが趣があってよろしいということでお茶席などで珍重されます。和歌山県の根来寺が発祥だという説があることから、紀州漆器に多く見られるデザインでもあります。経年を省いて最初からまだらに塗ってあるものが販売されているのも昨今の性急な日本人を象徴しているなぁと思います。

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昭和40年代の紀州塗の大鉢。様々な使い方でなんとか日本人の食卓からはじき出されぬように、との苦悶が伺えます。素地は天然木加工品、塗は漆。ところで最近の漆器の素地に木合とか天然木突板と書いてあるのを見ますが、言葉の響きからしてなんとなく天然木に近いような印象を受けるのは私だけでしょうか?以前主流だったフェノールなどのカタカナ文字や合成という文字が意図的に排除されていると思います。ちなみに木合は、フェノール樹脂45%、木粉55%程度の成型品です。








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福井県の南、鯖江市の河和田地区を中心に生産される越前(えちぜん)漆器の菊水椀。以前は河和田(かわた)漆器と呼びました。

この地の漆器の歴史は古く、京都から蒔絵、輪島から沈金といったほかの地域からの技術も取りこみながら発展してきた産地です。越前漆器の特徴は、「渋下地」(しぶしたじ)にあります。輪島の本堅地には及びませんが、柿渋に炭粉を混ぜたものを繰り返し塗る下地方法で行程が少ない割に堅牢だとされます。そして上塗りは、花塗(はなぬり)です。ほかのものと比べてもまるで合成塗料のような艶感がありますが、油分を含んだ漆を塗り研ぎださない塗り方ですので漆特有の光沢が得られます。手で塗るものですから、このように刷毛目さえもないように塗るには非常に熟練を要します。が、かえって合成漆器のような完璧さに近づいてしまい、漆器に興味のないかたには勘違いされてしまいます…









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島根県松江市および出雲市特産の八雲塗の文箱と茶托。

八雲塗(やくもぬり)は、明治19年ごろに漆工の坂田平一(平市)氏が考案した比較的新しい漆工芸です。色漆を使って絵画的に描いた牡丹が独特のものです。上塗りは透漆(飴色半透明の漆)に少量の蝋色(呂色)漆を混ぜることで非常に落ち着いた油彩画のような雰囲気があります。あまり若い人好みではないとおもいますが、非常に手間ひまのかかった素晴らしい工芸品です。






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福岡の人にはおなじみの籃胎(らんたい)漆器。おばあちゃん家で見たことある、という人も多いでしょう。竹を編んだものを素地とするのが特徴の漆器です。固くて伸びのよい真竹を様々に手編みした竹籠を、十数回も漆で塗り固め、さらに朴炭、鹿角粉で巧妙に研磨したもので普通の漆器には到底及ばない堅牢優雅な味わい…というのがウリでしたがそれも昔の話。現在売られているもののほとんどが中国を主とする東南アジア製で、久留米で作られているものもカシューおよび合成塗料となっています。
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ちなみに左はカシュー塗料、右は漆の籃胎漆器。やはりカシューは本物の漆の堅牢さには敵いませんし、見た目の艶も漆の方が自然な光沢で美しいです。あまつさえ、合成塗料は明かりの下でギラギラと白く照り返すばかりで下品な輝きです。




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福島県の会津漆器の盃。

第4回財団法人結核予防会全国支部長大会福島県支部、のセットもの。しかも真ん中の盃にはこけし!ということでキワモノと思いがちですが、そこは歴史ある会津塗の底力。会津塗は400年以上の歴史をもち朱塗りの木盃と会津消蒔絵(あいづけしまきえ)がこの地方独特のものです。この、こけし盃は両方の技法を存分に生かしている素晴らしい工芸品なのです!会津消蒔絵とは、非常に細かい金粉を使う蒔絵の技法で独特の明るい金色が特徴です。

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同じく会津塗の鉄線小引き出し。

会津塗のもうひとつの特徴が先ほどもでました「花塗」。非常に光沢のある仕上がりで美しいです。最近の定番柄でこの鉄線模様のシリーズは丸盆など百貨店で取り扱いがあります。色漆と青貝の象眼を施した手の込んだ作りです。が、…この小引き出し、上塗りは漆でなくカシュー塗料です。あのカシューナッツから採れる油分を使った合成樹脂塗料ですが、漆に似た光沢を持ちます。お椀と違って口にあたるものでなし、コスト面から鑑みるとこれで上等、と思うか否か。売れる製品を作らなければない現在の職人さんの苦労やいかに…

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またまた会津塗の銘々皿。

素地は樹脂です。上塗りは漆。色漆で野菜の柄が可愛らしく描かれています。上塗りが漆であれば、素地が何であろうと「漆器」と称して問題ないのです。まあ一般消費社はそこまで気にしてないでしょうし…コストを下げるために樹脂の素地を使っている訳ですからもちろん下地の行程も省いてあることがほとんどです。ちょっと落としたりぶつけたりで塗がはがれやすいのは否めません。一番憂慮するのは、そういった商品を漆器だと思って使った人が「なんだ、漆器ってすぐダメになるんだ」と思ってしまうことです。








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輪島塗と同じく石川県を代表する山中漆器の菓子器。

合成漆器の一大産地として名を馳せる山中漆器ですが、きちんとしたものももちろんあります。挽きものを得意とし筋引きの製品も特徴的ですが、この菓子器も木目を生かした透漆仕上げの部分と、花塗で艶よく塗られた蓋とのコントラストが美しく、蓋の朱塗りの部分には金蒔絵が上品に施されています。








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金沢箔が施された室町菓子皿、2枚組。

共箱の通産大臣指定という文字が見るからにいかがわしいのですが、やはり。金箔の横半分、漆塗りとおぼしき部分はウレタン塗装です。見事に伝統工芸品としてのスピリットが抜け落ちたハリボテ商品と言えるでしょう。一見して非常に豪華ですのでわかった上でお客様用の菓子皿などにするには申し分ないと思います。






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弊店の漆器まつりではおなじみの琉球漆器。沖縄へ行ったことがあるかたはお土産屋さんなどでご覧になったことがあるでしょう。全国の百貨店などではほとんど取り扱いがありません。

沖縄はもちろんのこと、戦時中に強制疎開した技術者の方々が宮崎や鹿児島で制作したものもあります。一番の特徴は下地にブタの血を使う「豚血下地」で、上塗りの朱は一般的な朱塗りの調合量の倍以上の朱を入れるため鮮烈な紅色です。また漆自体にたくさんの油を加えるので、本州では乾燥できないそうです。また独特の堆錦(ついきん)と呼ばれる盛り上がった加飾も個性的です。伊勢エビの椀は戦前のものですが、近年のものにはない細やかさがあります。





以上、おおまかに産地のわかる漆器をご紹介して参りましたが、今週末12月16日(日)まで第3回「漆器まつり」開催中でございます。どうぞ御立ちよりくださいませ…

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